決める役と作る役を、なぜ分けているか
ぼくはコードを読めません。それでも、AIが作ったものを公開してよいかどうかは、自分で決めています。
今朝、Xでこう聞きました。「コードを書かない人が、AIに作らせたものを承認するとき、何を見て承認していますか」。ぼくの答えは、指示書と、返ってきた報告の5項目です。コードは見ていません。それで回っている理由を、4本に分けて書きます。1本目は、そもそもなぜ2つのAIに分けているか、です。

ぼくの体制
使っているAIは2つです。
- 決める側: チャットのAI。ぼくの相談相手で、何を・なぜ・どこまで作るかを日本語の「指示書」にする
- 作る側: コードを書くAI(ぼくはClaude Codeを使っています)。指示書を読んで実装し、公開の直前に一度だけ止まって報告する
ぼくの仕事は3つだけです。決める側と相談する。出てきた指示書を読んで、作る側に貼る。報告を読んで、承認するか直すか言う。
ぼく ⇄ 決める側(チャット)
↓ 指示書(日本語)
作る側(コードを書くAI)
↓ 報告(変更ファイル/前提の確認結果/要確認と根拠/検査の結果/実物の所在)
ぼく → 承認 → 公開

最初に分けた理由
正直に言うと、最初は理屈より感覚でした。
人の組織でも、企画する人・設計する人と、実行する人は分かれていることがほとんどです。実行役にぜんぶ担わせるのは無理があると思っていたし、そうすると漠然と間違った方向に進む気がしていました。それに、チャットとコードを書くAIは、そもそも動く場所が違います。こういうふうに使うものなんだろう、と勝手に考えて、2026年8月9日にこのサイトを作り始めた日から分けています。
もしチャットのAIが実行役も兼ねていたら、分けなかったかもしれません。
分けてみて分かったこと
1か月使って、感覚だった理由が5つの実感になりました。実感の順に書きます。
1. 判断が自分に残る
コードは読めなくても、指示書は読めます。「何を・なぜ・どこまで」が日本語で書いてあるので、意図が合っているかは自分で判断できる。承認の対象がコードから指示書と報告に変わったことで、最終判断を手放さずに済んでいます。
2. 2つのAIが互いに反証する
決める側も間違えます。作る側が指示書を読んで「前提とファイルの実物が違う」「材料が無い」と止まると、決める側の間違いがそこで見つかる。逆に、決める側が「その頼み方は前提がおかしい」と言うと、ぼくの間違いが実装の前に見つかる。AIが1つだと、決めるのも作るのもできたと言うのも同じAIで、間違いが中で完結してしまいます。
3. 自分の理解が深まる
指示書と報告を毎回読むので、コードは読めなくても「いま何をしているか」は分かるようになりました。1か月前より、自分のサイトの仕組みを説明できます。
4. どこで外れたか分かる
うまくいかなかったとき、指示書と報告を照らすと「決め方が悪かった」のか「作り方が悪かった」のかが切り分けられます。AIが1つだと、これができません。
5. 記録が残り、時間を分けられる
指示書は文書として残ります(2026年9月9日時点で14本)。決めるのはセッションの中で、作るのはセッションの外で貼るだけ、と時間も分けられます。
この体制でないやり方は、もう怖くてできません。1つのAIと1対1でやっていたら、望んでいたものの100%はできていなかったと思います。
ただし、分けただけでは反証は起きない
ここが、この続きものでいちばん言いたいことです。
作る側が止まってくれるのは、体制を分けたからではありません。「前提を実際に読んでから作る」「無いものを参照されたら推測で補わずに止まる」「分からない値は[要確認]にする」という決まりが、作る側の設定ファイルに書いてあるからです。決まりが無ければ、実行役は黙って作ります。
同じことが決める側にも言えます。「材料はファイル名で指定する。『添付』『前のメッセージ』と書かない」という決まりが無かったころ、渡したつもりのものが届かない事故を、ぼくは1か月で5回起こしました(8月30日、8月31日、9月5日、9月9日に2回)。分業の弱点は、いつも引き継ぎです。
だから、この型の中身は「決まり2本」です。決める側のAIに最初に1回貼る決まりと、作る側の設定ファイルに1回貼る決まり。この2本を、ツールとして公開しました。中身は2本目・3本目で1行ずつ説明します。
今朝の実物
体制が動いた例を、今日のものから1つ。
今朝、毎朝動く自動処理が止まっていました。原因は、前日ぼくが新しいファイルを git add の一覧(機械が保存する対象の一覧)に足したとき、そのファイルが .gitignore(保存しないファイルの規則)に当たっていることを確かめていなかったこと。決める側に状況を貼ると、原因の候補と確度を分けて出してきて、指示書になりました。作る側に貼ったら、こういう報告が返ってきました(一部を抜粋。画像は報告の原文です)。
① check-ignore の結果
29行目の包括規則data/*に当たっていました。同じブロックに他のファイルの例外はあり、own_posts_x.json だけ例外が無い状態でした。② 台帳の設計判定: 蓄積型。前回以降の差分だけを取得し、既存の記録に新規分を足して保存します。毎回全件を書き直す設計ではないので、ファイルをコミットして引き継ぐ必要があり、指示どおり修正しました。
③ 差分
・.gitignore に例外を追加(理由のコメントつき)
・git add 一覧にある全パスに check-ignore を当て、NG は0件でした
・開発規約への追記として「git add 一覧にパスを足すときは git check-ignore で確認する」承認で push します。

check-ignore は「このファイルは保存しない規則に当たるか」を調べる命令、コミットは変更を記録として確定させる操作です。
ぼくが見たのは、この報告だけです。コードは見ていません。「原因はここ」「このファイルは引き継ぐ必要があるから、こう直した」「他に同じ穴は無い」「同じ失敗を防ぐ規約を足した」が日本語で書いてあるので、承認できました。
止まったのは失敗ですが、直し方が記録に残ったので、同じ穴には落ちません。
この続きものの残り
- 第2本: 決める側の決まり(チャットのAIに貼る文と、なぜその行があるか)
- 第3本: 作る側の決まり(設定ファイルに貼る文と、なぜその行があるか)
- 第4本: ぼくの1日の使い方
このツールを公開しました(2026年9月11日)
記事に出てきた「決まり2本」を、「Code指示書の型」の名前で公開リポジトリに置きました。中身は Markdown のテキスト2本と README だけです。
chat_side.md── チャットのAI(決める側)に、最初に1回貼る決まり。以後、作業はすべて「指示書」の形で出てくるようになりますclaude_md_block.md── 作業リポジトリの設定ファイル(CLAUDE.md)に、1回貼る決まり。材料が無いときに作らず止まる・分からない値を推測で埋めない・公開の直前に1回だけ止まって報告する、という動きになります
テンプレートや記入例は入れていません。ぼくの環境で確かめた結果(2件)と提供条件(MIT・保証なし)は README に書いています。
→ hitori-ai-factory.com/tools/code-brief
→ github.com/mhitori/haif-tools/tools/code-brief
- 2026-09-11 表示を修正(引用の段落分け・ツールの案内節を追加)
- 2026-09-18 追記: 図1(3者の関係図)を加えました。本文は変えていません。
続きもの「決める役と作る役を分けている話」全4本
- 第1本決める役と作る役を、なぜ分けているかこの記事
- 第2本決める側の決まり ── 11行のうち、事故から生まれたのは2行
- 第3本作る側の決まり ── AIが1日に3回止まった。3回とも、なぜ作ったか書いていない行だった
- 第4本AIは前の日を覚えていない。だから毎朝、決める側のAIに1枚貼る ── 決める役と作る役・最終話
この工場の続きはXで実況しています → @hitoriaifactory